Python ランタイムは、ウェブサービスのコードとその依存関係をインストールして App Engine サービスを実行する役割を果たすソフトウェア スタックです。
スタンダード環境の App Engine 用 Python ランタイムは、app.yaml ファイル内で次のように宣言されています。
runtime: pythonVERSION
ここで、VERSION は Python MAJOR と MINOR のバージョン番号です。たとえば、最新バージョンの Python(Python 3.13)を使用するには、313 を指定します。
サポートされている他の Python バージョンと、お使いの Python バージョンに対応する Ubuntu のバージョンについては、ランタイム サポート スケジュールをご覧ください。
Python 3 のバージョン
サポートされている最新の Python バージョンは 3.13 です。Python ランタイムは、app.yaml ファイルで指定されているバージョンの最新の安定版を使用します。App Engine では、パッチ バージョンは新しいものに自動更新されますが、マイナー バージョンの更新は自動的には行われません。
たとえば、Python 3.7.0 にデプロイしたアプリケーションが Python 3.7.1 に自動的に更新されることはありますが、次のマイナー バージョンである Python 3.8.0 には自動更新されません。
使ってみる
Google Cloud を初めて使用される方は、アカウントを作成して、実際のシナリオでの App Engine のパフォーマンスを評価してください。新規のお客様には、ワークロードの実行、テスト、デプロイができる無料クレジット $300 分を差し上げます。
App Engine 無料トライアルApp Engine は、gVisor によって保護されたコンテナで、最新の Ubuntu Linux ディストリビューションを使用して Python アプリを実行します。
依存関係
デプロイ時に、App Engine は Python パッケージ マネージャー pip を使用して、プロジェクトのルート ディレクトリにある requirements.txt メタデータ ファイルで定義された依存関係をインストールします。依存関係は App Engine によって新しくインストールされるため、アップロードする必要はありません。
Pipfile / Pipfile.lock スタンダードを使用した依存関係の指定は現在サポートされていないため、プロジェクトではこれらのファイルを使用できません。
アプリケーションの起動
ランタイムは、app.yaml ファイル内の entrypoint フィールドで指定したコマンドを実行してアプリを起動します。app.yaml ファイルで Gunicorn ウェブサーバーのエントリポイントを構成している場合は、requirements.txt ファイルに gunicorn も追加する必要があります。
エントリポイントは、PORT 環境変数で指定されたポートをリッスンするウェブサーバーを起動します。次に例を示します。
entrypoint: gunicorn -b :$PORT main:app
アプリで使用するウェブ フレームワークは、アプリ内の適切なハンドラにリクエストをルーティングします。
アプリが次の要件を満たしている場合、entrypoint フィールドを指定しないと、App Engine は gunicorn ウェブサーバーでアプリを起動します。
アプリのディレクトリのルートに、
appという WSGI 準拠のオブジェクトを含むmain.pyファイルが格納されている。アプリに
PipfileファイルまたはPipfile.lockファイルが含まれていない。
Python 3 ランタイムのエントリポイントを指定しない場合、App Engine はデフォルトの Gunicorn ウェブサーバーを構成して起動します。
エントリポイントのベスト プラクティス
app.yamlで指定したエントリポイントの実行に必要な Python モジュールがrequirements.txtファイルに存在することを確認します。app.yamlファイルでgunicornエンドポイントが明示的に指定されている場合にのみ、gunicornをrequirements.txtファイルに追加します。パフォーマンスの観点から、エントリポイントを軽量化することが重要です。エントリポイントはアプリケーションの新しいインスタンスが作成されるたびに実行されるからです。
エントリポイント フィールドを使用して、アプリのパフォーマンスを調整できます。たとえば、
gunicornをウェブサーバーとして使用する場合は、エントリポイント フィールドで--workersフラグを使用して、アプリを処理するワーカーの数を構成できます。指定するワーカーの数は、App Engine アプリのインスタンス クラスと一致する必要があります。
インスタンス クラス ワーカー F1 2 F2 4 F4 8 F4_1G 8 B1 2 B2 4 B4 8 B4_1G 8 B8 8 このガイダンスは、ワーカー数を選択するための出発点として役立ちます。アプリのパフォーマンス特性によっては、上記とは異なる数のワーカーを使用しなければならない場合もあります。次の例は、2 つの
gunicornワーカーを使用してアプリを処理する App Engine デプロイメントを示しています。entrypoint: gunicorn -b :$PORT -w 2 main:app$PORT環境変数で指定されたポートで、ウェブサーバーが HTTP リクエストをリッスンして応答するように構成することをおすすめします。デフォルト ポート8080を使用すると、App Engine は NGINX レイヤを使用して HTTP レスポンスを圧縮できなくなります。ポート8080を使用すると、ポート8080と NGINX に関する警告がアプリのログファイルに表示されます。
その他のウェブ フレームワーク
Django や Flask に加えて、App Engine で uwsgi や Tornado などの他のウェブ フレームワークも使用できます。次の例は、App Engine で uwsgi を使用する方法を示しています。
環境変数
ランタイムは以下の環境変数を設定します。
| 環境変数 | 説明 |
|---|---|
GAE_APPLICATION
|
App Engine アプリケーションの ID。この ID の先頭には「region code~」が付きます。たとえば、ヨーロッパでデプロイされたアプリケーションの場合は「e~」となります。 |
GAE_DEPLOYMENT_ID |
現在のデプロイの ID。 |
GAE_ENV |
App Engine の環境。standard に設定します。 |
GAE_INSTANCE |
現在サービスが実行されているインスタンスの ID。 |
GAE_MEMORY_MB |
アプリケーション プロセスで使用可能なメモリ量(MB)。 |
GAE_RUNTIME |
app.yaml ファイル内で指定したランタイム。 |
GAE_SERVICE |
app.yaml ファイル内で指定したサービス名。サービス名が指定されていない場合は、default に設定されます。 |
GAE_VERSION |
サービスの現在のバージョン ラベル。 |
GOOGLE_CLOUD_PROJECT |
アプリケーションに関連付けられた Google Cloud プロジェクト ID。 |
PORT |
HTTP リクエストを受信するポート。 |
NODE_ENV(Node.js ランタイムでのみ使用可能) |
サービスがデプロイされたとき production に設定。 |
app.yaml ファイル内で追加の環境変数を定義できますが、上記の値は NODE_ENV を除きオーバーライドできません。
HTTPS プロキシと転送プロキシ
App Engine は、ロードバランサにおいて HTTPS 接続を終了し、リクエストをアプリケーションに転送します。アプリケーションによっては、元のリクエストの IP とプロトコルが何か確認する必要があります。ユーザーの IP アドレスは、標準の X-Forwarded-For ヘッダーで確認できます。この情報が必要なアプリケーションでは、プロキシを信頼するようにウェブ フレームワークを構成してください。
ファイル システム
このランタイムには完全なファイル システムが含まれています。このファイル システムの /tmp(App Engine インスタンスの RAM 内のデータを格納する仮想ディスク)以外の場所は読み取り専用です。
メタデータ サーバー
アプリケーションの各インスタンスは、App Engine メタデータ サーバーを使用してインスタンスとプロジェクトに関する情報を照会できます。
次のエンドポイントを介してメタデータ サーバーにアクセスできます。
http://metadatahttp://metadata.google.internal
メタデータ サーバーに送信されるリクエストには、リクエスト ヘッダー Metadata-Flavor: Google を挿入する必要があります。このヘッダーは、メタデータ値を取得する目的でリクエストが送信されたことを示します。
次の表に、特定のメタデータを取得するための HTTP リクエストを作成できる各エンドポイントを示します。
| メタデータ エンドポイント | 説明 |
|---|---|
/computeMetadata/v1/project/numeric-project-id |
プロジェクトに割り当てられているプロジェクト番号。 |
/computeMetadata/v1/project/project-id |
プロジェクトに割り当てられているプロジェクト ID。 |
/computeMetadata/v1/instance/region |
インスタンスが実行されているリージョン。 |
/computeMetadata/v1/instance/service-accounts/default/aliases |
|
/computeMetadata/v1/instance/service-accounts/default/email |
プロジェクトに割り当てられているデフォルトのサービス アカウントのメール。 |
/computeMetadata/v1/instance/service-accounts/default/ |
プロジェクトのすべてのデフォルトのサービス アカウントを一覧表示します。 |
/computeMetadata/v1/instance/service-accounts/default/scopes |
デフォルトのサービス アカウントでサポートされているすべてのスコープを一覧表示します。 |
/computeMetadata/v1/instance/service-accounts/default/token |
アプリケーションを他の Google Cloud APIs に認証させるための認証トークンを返します。 |
たとえば、プロジェクト ID を取得するには、リクエストを http://metadata.google.internal/computeMetadata/v1/project/project-id に送信します。